ジュリエットには甘いもの 中篇/(罧原堤)
 
、指で触れると熱そうだった。
 水槽の底には薄汚い泥が堆積している。ずいぶん水を汲み替えてなかったからだろう、水の色がすごい濃緑色。カビなのかコケなのかわからない。そんな水中を小蟹がこともなげにに泳いでいた。
 床の上にはルーズリーフの山や、ノートの山、プリントアウトされた紙などがたくさんあり作家志望者の部屋だとたいていの人なら気づくだろう。まさか僕を作家だと思う人はいないだろうから。
 裸電球が光を放っている。天井から蜘蛛の糸が埃をまといつかせて垂れ下がっている。ごちゃごちゃと散らかった部屋で、座るスペースはわずかしかない。机の上に缶コーヒーの空き缶が数十缶、縦や横にわびしげに並んでいて、
[次のページ]
戻る   Point(0)