ジュリエットには甘いもの 中篇/(罧原堤)
ーターで、顔はあまりパッとしなかったが、おどおどしたような態度が太りかけの青年のハートを虜にしていた。それに、スタイルはまあまあで、今時の女の子には珍しく髪を染めておらず、その素朴さは太りかけの青年にとって、かけがえのない目の保養だった。動物たちの排泄物。臭い匂いが流れてくるこの職場は彼女に似合っていた。ブランド物に身を固めて、おしゃれなカフェで友達と待ち合わせをする、そんな外見のみを着飾る中身のない女たちとは違い、彼女には心のやさしさが感じられた。
(どうしようかな……。また乗ろうか。……もう五回連続で乗っているからな、……次、乗るならまた回数券を買ったほうが安上がりなんだけど、それだと残った
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