ジュリエットには甘いもの 中篇/(罧原堤)
 
毎日やってくる。一回乗るだけでは飽き足らずに、何度も乗りやがる。
 もしかしたら、向かいの売店の洋子ちゃんに惚れているのかも知れないな……、だけどあんな不細工な奴が相手にされるわけないだろう。でも、何が起こるかはわからない。早く洋子ちゃんをデートに誘っておかないと、……あんなにしつこく観覧車に乗る男だ。洋子ちゃんにもしつこく迫るかも知れない。それに洋子ちゃんはうぶそうだし、押しの強い男に弱いんじゃないか。あいついつも売店で用もないのにうろついてやがるし……)
 動物園でアルバイトをしている太りかけの青年は洋子に惚れていた。彼女は太りかけの青年とほぼ同時期に、この動物園で働くようになったフリータ
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