ジュリエットには甘いもの 前編/(罧原堤)
 
る恐れがあったので男は掴んで放さないまま弧をえがくように空中へと急上昇していった。
 寒い…… 夜風、思っていたより激しい……
 腕時計を見るともう夜の10時を回っている。時間がたつのが早い。思っていたより早い……
 だがそんな男を励ますかのごとくイチゴの乗ったショートケーキがたくさん浮かんできだしたので、男は口をあけると、ショートケーキにぶつかっていった。顔中クリームだらけになったが疲れているときに食う甘いものは確かにうまく、別腹に入っていきやがって結構、食えて、ただ、
「今あえて叫ぶ! 俺が求めているのはそんなもんじゃねえんだ。そんな甘めえもんじゃねえ。どっちかっつうともっと辛れえもの
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