ジュリエットには甘いもの 前編/(罧原堤)
 
れるままに男はパシってきて、その絵を持ってきて、「はい」と、言って、手渡そうとしたのだが、思いもかけず体が躍動しだして止まらず、そのまま開け放された戸口へと浮かんだ体が一直線に飛び出してゆき、
「おい! その絵、どこ持ってくんだよ! 渡せよ! おい! 出て行くのはかまわねえが絵は置いていけ! その絵見ながらまだ余韻に耽りたいんだよ俺たちゃ! ヤモリ元気だったろうな! あと、あとな、コーラは余計のど渇くからな!」
 だが、そりゃ、絵を渡すことに関してはやぶさかではなかったのだが、手が絵を握り締めていてその拳、握りこぶし、その、こぶしを利かせていなければ方向が定まらず不安定になり壁などに激突する恐
[次のページ]
戻る   Point(0)