ジュリエットには甘いもの 前編/(罧原堤)
 

 そして日々は過ぎてゆく……
 どう人生を生きれば良かったのだろう……
 前にしか進めなくて……
 人生に疲労困憊して、困窮して、衰弱して、前にも進めなくなって……
 男は日々なすこともなく、その日、その晩も部屋の明かりを絶やすことなく彼らの帰りを待っていた。彼らは帰ってきたが、しばらく無言でテーブルに座っていて、目が潤んでいる者が多く、
「いい…… 彼らの描く絵ってのはなんであんなにいいのか……」
 ぐすん、と、鼻をすすって、
「だろ。行ってよかっただろ。……おいてめえ、タコ部屋行って絵もってこい。ちゃんとテープはがせよ。破くなよ。そんでゴッホのほうじゃねえぞ」
 言われる
[次のページ]
戻る   Point(0)