ジュリエットには甘いもの 前編/(罧原堤)
」
だんだん少女のまぶたが重くなってくる。
「……この世に悪がはびこるとき、魔人があらわれる。この世の人々が悪徳で染まるとき、突如としてその群れの中の、その時代の如才だらけの、だらしない、冴えない男の心のうちにある変化が生じ、死んでいったものたちの、巨大な、怨念が注ぎ込まれて、朦朧として倒れふし、……全身が痙攣しだして、変わろうとする心に抗おうと必死でじたばたともがくが、混濁した意識はやがて慢心さで満たされてゆく……、なんなんだこれほんとに、わけわかんないや」
少女は本をほっぽり投げると、そのまま眠ってしまおうとした。その本は13年前の聖誕祭の日にまだ字も読めない少女に父親がプレゼントし
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