ジュリエットには甘いもの 前編/(罧原堤)
 
太陽が容赦なく老人のあれた肌を焼く。老人は皮袋を口に運び、のどを潤した。
 見渡す限り赤茶けた大地が拡がっているさびしい所だった。老人は歩き始めた。
 二日後、ある小村に到着した。
「すみません、何か食べ物を施してもらえませんか?」
 老人は戸を叩きながら、そう呟いてまわった。ようやく、気のよさそうな太った女が藁小屋の風通し窓から顔を出して、にこにこと笑いながら、
「まあ、かわいらしい赤ちゃんですわね。よければ私がお乳を飲ませましょうか?」
「それは願ってもないことです。助かりました。感謝します」
「いえいえ、私はお乳をあげるのが好きなんですよ。ちょうど私の子供が乳離れしたとこだった
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