ジュリエットには甘いもの 前編/(罧原堤)
裕をふり絞って空威張りした。──沈みゆく夕陽に向かって。
「……何かきてますよ」
私はせまりくる恐怖に子猫のようにおびえながら、
「大たつまきだ」
ずけずけと、
「……飛びこめますか? あの中に?」
「たやすいことだ」
私の額に冷や汗が流れていた。
6 老人と赤ん坊
爽やかな風が吹き渡る大地に齢百歳の老人が立っていた。この老人は丘の上に立っていた。胸には布でくるまれた生後、四、五ヶ月の赤ん坊。老人はいつくしみながらこの赤ん坊を育てるつもりだった。老人の腕にしっかりと抱かれて赤ん坊はすこやかに眠っていた。
「もうじき砂嵐がひどくなるな」
照りつける太陽
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