ジュリエットには甘いもの 前編/(罧原堤)
 
やたましいが夢の世界に遊びだしていて、うずうず、まいたった、けだるく天上界の宴へ通じる回廊を歩いていた、すると門番に呼びとめられた。待っていると、あの牧神がやってきて、
「またおまえか。よく図々しくこれるものだな」
「待ってください私はたった今、ほのかにかおる、来るだけに足るものを」
 そっこーで、
「ダメだあんなもん、ゴミクズだ!」
 それから、私はむんずと襟首をつかまれて、つまみ出された。後頭部に蹴りを入れられながら。──気づくと、若者に、
「大丈夫ですか、正気を失っていたようでしたが」と、半笑いで、心配されたが、
 威厳たっぷりに、
「預言者とはそういうものだ」と、ない余裕を
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