ジュリエットには甘いもの 前編/(罧原堤)
だ。……自分をより拡散できる舞台を。おのれの価値を全世界にとどろかせてみろ! 大あらしがきたらんとしていても、その中に飛び込まないのなら何事も起こりはしない。……脆弱だから、飛び込めない? そんなのは言い訳だ。自分の弱さに甘えているだけの卑怯者だ。羽ばたくか舞い落ちるか、その扉を開こうともせずがたがた考えるんじゃねえ、どん底にいるならなおさらだ。一秒一刻も無駄にするな、どんな困難が立ちはだかろうとも、うねりの中に身を投げだせ! そこが白日のもとであろうが、漆黒の中の荒野であろうが! ゆけ! ひとみ愛に燃えて!」
男は私の顔を食い入るように、まばたきひとつせず見つめていたが、──私は、またもやた
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