ジュリエットには甘いもの 前編/(罧原堤)
?」
「罪人を見に行くっていってたな」
「そう言ってたんだな、本当に」
「ああ、それがどうしたんだ」
「行こうか、その女のもとへ」
「なぜ?」
私は彼の肩を叩き、
「おまえには時間はない。そして何もかもがない。それは今後も変わらないだろう。もたもたしてると誰かに奪われるぞ」と、ぼっそりささやいた。耳もとで。
私は自分に言い聞かせるように、考えこみながら、ゆっくり言葉をつないでいった。
「戦いを放棄したものに投げかけられるのはさげずみの言葉だけだ。たとえそれを表面にあらわさずとも言外ににじみ出てしまう。いいか、そんな奴らはただ死を待つだけの身だ。争うことによって地位を得るのだ。
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