ジュリエットには甘いもの 前編/(罧原堤)
 
についてきて欲しいってよ。俺も行きたくはあったんだ。だけど、そんなこと言ったってよ、そんなとこにゃ、何もない、不幸しかない、頼るものもいない。なにより希望がないじゃないか」
「彼女はおまえを頼りにしていたんじゃないのか? ほおっていくこたないだろ」
「俺を? 俺じゃその女を幸せにできないからな。俺みたいな放浪者じゃ。無理な話さ。俺は自分の道を一人で進むしかないのさ。……彼女はほかの奴をすぐ見つけるさ。俺以外の誰かを。替りなんていくらでもいるだろうよ」
「まあ、どこに行こうが、何をしようが、おまえの勝手ではあるが。それはいつの話なんだ?」
「10日ばかり前かな」
「それをまるで大昔のことの
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