ジュリエットには甘いもの 前編/(罧原堤)
 
はそのあとに続いた。
「どこに行くんだ?」
「まっすぐ。ただ見つめてるだけさ、前を」すぐ、言い直した、「風を、その吹きっぷりを」
 それから照れくさそうに、
「女がわんさかといる、オアシスにでもたどり着ければいいんだけどな」
「そうだな。綺麗な水、澄んだ水なんて、飲んでねえな、そういやここんとこずっと」
 廃墟から煙が立ち上っていた。上へ上へとゆらゆらと。
「あの街も神の怒りにふれたわけだ」
「ええ、俺たちの生活は荒みきっているんです、それほどまでに」
「ほんとうに神の仕業なのか」
 男は怪訝そうに、
「ほかにこれほどまでのことをできる者がいますか? 第一、罰せる権限を持つも
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