ジュリエットには甘いもの 前編/(罧原堤)
「独り者か? 恋人は?」
「今はひとりだ。俺は女を愛せなくなったんだ。肉欲はあるが……、ふんだんに……」
「自己処理精神が旺盛なんだな。いろんな問題をそりゃ抱えてるんだろうがわき目もふらずに、せっせと、悶々、黙々と」
ものといたげな目で、
「……つぎつぎと、なにかをなしとげる?」
「いや、出してしまうということさ」
不思議そうに、
「何を」
「欲求不満という名の体液さ!」
朝陽がのぼり夜明けが終わった。朝だ。旅立たねばならない。私は探し出すあなたがどこをさ迷っていようとも。歩いて寝るだけの日がつづいても。男は先にたって歩いていった。まるで目的地があるような足取りで。私はそ
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