ジュリエットには甘いもの 前編/(罧原堤)
あたりが照らされだし、緑の草がところどころ、そこらじゅうに跳ねている。あれだけ踏み散らかしたのにもかかわらずに。土はまだぬかるんでいるがすぐ固まるだろう。私の足跡はもう消えていた。だが、まだのし上ろうとする火種は心に残っている。メラメラと、野心が。火の粉で目がしょぼしょぼするほど。人間性もわずかばかり。ためらう恥じらいも。空気みたいなものだが。──そよ風が、入り込んだ……
「新しい情報はあるか?」
「ソドムとゴモラが滅んだ。神の怒りにふれて」
「そうか……」
街角では、人々が今までの人生に恥じ入っていた。その堕落した人生に。こいつのようにぽつりぽつり逃げ出すやからも多くなっていた。
「
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