ジュリエットには甘いもの 前編/(罧原堤)
していたんだが、それからは夢を見ていたのか現実におきたことなのか今もってわかりはしねえ、うす目をあけてみるとそいつが青白い顔して目をひん剥いて、踊ってやがった。俺は恐ろしくてなあ、生きた心地がしなかったよ。食われちまうと思ったんだ! そいつは俺が逃げようとすると、ふりむいて……、──やあ、おはよう。目ざめは?」と、悪魔のような微笑を浮かべて。
皮袋から一口、水をあおり飲むと、平静を装って、
「……悪くはないが、女に起こされたかったな。どうせなら」
「ブスでもか?」
あわてて、咳き込み、
「いやまああんたで良かったよ……」
天候はずいぶんましになってきていた。じきにやむだろう。あた
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