お化け煙突とボロアパート/真島正人
それも
僕のものでも
女のものでもなく
ただのそこにある
沁みのような記憶だ
誰かが置き忘れ
たまたまその女の
卑猥な部分に縫い付けられた
行き場のない記憶
どこかに飛んでいきたくて
うずうずとしている
はみだしてくるような記憶
それが
人の隠された裂け目から
産み出されてぽつぽつと
滴り落ちてこないかと
そんなことを
母乳を求める、
乳離れでききれていない
3歳児のように
待ち望んでいる
僕はほとんどの場合そうしてきた
女になにあてどのないものを求め、
「無い」
と断られてきた
そんなことは
母親の乳の頃から
そうだ
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