お化け煙突とボロアパート/真島正人
 

だが
それは消えてなくなったわけではないのだ

たぶんあの煙は
大気中に混じり
かなり遠くまで流れている
僕たちの肺にも
必ず吸い込まれているだろう

女は
アパートの駐車場に
古い車を停めている
車の中には
「たくさんの思い出が積んである」
という

「薄汚い段ボール箱にでもしまいこんで? バックシートに?」
と僕が冗談交じりに
尋ねると
女は真剣に悲しそうな目で睨む
悪かったよ、
よくわからないけれど

僕にだって
思い出はたくさんある

断片ごとの
人間味を失った
機械のようにカチコチに固まった
思い出が

思い出の重さを

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