眼鏡の定義/葉leaf
 
はまだ、矛盾が人間と愛と生産と原石であることに気づいていなかったのだ。
 私は数人を巻き込んで科学部をやめた。教師に怒られた。
 高校に入って部屋の整理をしていたら、双眼鏡を見つけた。科学部で野鳥観察をしたときに買ったものだった。懐かしかった、空の中心へと脱落していく成熟を小鳥のように拾い集めていた日々が。眩しかった、部員たちの点描していた笑いや戯れのパズルの解法が。惜しかった、矛盾を摂り入れていたら私を打ち続けていたであろう社会のしなやかな美が。

 彼女はいつも眼鏡をかけていた。眼鏡をかけていると自分が美しく見える。表情の心拍へとすべてが囁き合い試し合い悲しみ合うのだった。眼鏡を外すと
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