眼鏡の定義/葉leaf
すと自分が美しく見えない。感情の柱が外れてすべてが漂流し陥落し黙秘してしまうのだった。愛すべき罪のように、千切られた死のように、濃縮された経水のように、眼鏡は彼女の出自にまで遡っていた。眼鏡を外すと彼女は一瞬五番目の彼女になり、それに慣れると三番目の彼女になる。彼女の番号はいつも奇数だ。
飲み会などで、同僚などに「眼鏡外してみてよ」と言われることがしばしばあった。他人は彼女とは羞恥の濃度が異なる気圏にいて、彼女の皮膚を衣服と間違えているのだった。彼女は「眼鏡は顔の一部」と言って断った。人前で眼鏡を外したら彼女は七番目の彼女になってしまう。
親しい男友達ができた。彼はすきを見てさっと彼女の眼鏡を取り外した。彼女は九番目の彼女になった。内側へと改革されていた彼女の人格が地上へと伯仲した。彼の視線の大行軍に対して彼女の視線は無力に渦巻きまとわりついた。一番目の彼女は狂い死に、三番目の彼女は身構えて、五番目の彼女は驚き通し、七番目の彼女は微笑んだ。「なんだ、きれいじゃない。」彼の言葉に、彼女は十一番目の彼女になった。
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