夜(は液状に波及する)/手乗川文鳥
 
を、
 線で閉じていく、交わらないように、
 わたしが夜中に叫んでも届かないように
 台無しにしよう、夜中に、
 わたしが恋人を罵っても、照らされないように
 家中の柱が意志を持って
 わたしの頭が打ち付けられるのを避ける


到達する、波。
此岸はみるみるせり上がり、
みちみちた海水が泡だって降り注ぐ、
かき消える声と声、
錠剤ならばもう捨てた、次は何を捨てるのか、
揉まれながら解けていく精神を押しとどめる、
(恋人の性器にぽえむと名付けたのも)
(ずっと昔のことだから)
肉体を縁取る名前をもてあそんで、
流れ出てしまったものになんの注意も払わなかった、

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