夜(は液状に波及する)/手乗川文鳥
これが真夜中)
「まだかえってこん、まだかえってこん、」
姿見の後ろを見ないようにして
もっと深く目を閉じる
あれは父親なんかではなくて、/沖縄で育った友人が/海で泳げなくなった理由を/思い出す/水死体の膨らみ方について/老人と思ったそれは/観光にきた大学生であったことについて/
より濃く腐食していく影、
帰ってこいよ、なんでも(いいか、ら
夜明けの圧力が散漫した部屋で居直っている
散って!/象形文字を気取った埃が/崩れ落ちて/遂に声から意味を奪う/更に透明度を下げる部屋/
顔も分からなくなって/
ようやく、
私は優しくなる
甘いものをあげようか、
(ぽえむと名付けた)
本当に、眠ってしまって。
雨、ばかり降ってて空が逆になる。
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