この雨の未明/ホロウ・シカエルボク
 

打たれ続ける庭が固形としての説得力を失くして
飛沫を跳ねるさまはまるで濁流のようだね
動けない家とともに僕は流されてゆく
名前も住所も関係がなくなるところまで
どんなに洗い流されても
世界は真白になんかならない
そのことは僕が一番よく知っている
土は土の色
夢は夢の色
名前も住所も関係がないところまで流されてゆく
その時僕がアドレスを手放さないままでいたらどうか笑ってください


いつからかもう電気がつかなくなって
サイドテーブルには蝋燭が
隙間風に揺れながらあたりを照らし続けている
蝋燭の明かりは嵐を喰う
蝋燭の明かりは嵐を喰って
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