夏の総力特集 ・ 「陰毛を考える」 最終回/salco
は母の記憶をこうして犯し直し、父親になると云う罰を受けねばならない。
インセストの観念は即ち自己処刑としてのイムポテンツへ至る道に他ならないのだった。
何故と云えば親父と女を共有するエヂプスの蹉跌は息子たる者の敗北である。アグリッピナを知ったネロ、ガアトル
ウドに売笑を見たハムレットが自滅の道を歩んだように、自らが生じ来た母に女を、出会った女に母を重ね見る男に
もはや緑の谷は望めない。その上親父の轍を踏み肉慾と引換えに子の父になる罠に落ちてしまえば、男としての存在
理由を一生活手段へと貶められ、社会的の属性さえ唯一人の女に牛耳られて生きねばならぬ。かてて加えて両性の因
業を黒々と見せて
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