夏の総力特集 ・ 「陰毛を考える」 第1回/salco
 
の定、対岸に座る男子達の間にひそやかな波紋が広がり始めた。
耳打ちしたり屈み込んだり、白いゴムのキャップや黒い頭が動く度に瞠目の一瞥や、にやけた注視が増え
て行く。下賤な好奇心の有り様にうんざりして、傍らでくつろいでいるA子さんの太腿を強いてちらちら
閲しながら、「ちっともいやらしくないぞ、バカ」と思っていた。
最初それは反発心の故だったのだが、ふと、猥褻なのは事象ではなく、それを規定する連中なのだという
事に気づいたのだった。大腿と性器の差異は機能だろう。その境界は部位として設けられているに過ぎない。
ましてそこに生えているのは表皮上を連続する体毛であって、機能の差異さえありはしない
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