夏の総力特集 ・ 「陰毛を考える」 第1回/salco
 
ないのだ。

確かに人間は野卑な一面を持っている。煌煌たる光源や公然で憚る行為に痴れるというのはしかし本能で
あり生態だ。その不変の低劣と、高次な人間性の獲得を思想に求め向上しようとして来た歴史的事実との境
界線は何処にも置けはしない。人間である以上そうした自己を蔭で享楽しているにも拘らず、臆面もなく外
に向けては猥褻だと糾弾する偽善者の根性、あるいは女だからと言って体毛に注目する愚劣こそが卑猥なの
だと得心したのだった。14歳の私は思ったものだ。なあんだ、下ネタ連発オッケーじゃ〜ん? 

                          下瀬花子自伝 『はみ出た私』より
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