まるでおだやかな宿命みたいに/ホロウ・シカエルボク
もしれない
ぼくは水たまりを踏みながら
寝ぼけた頭で聞いていた
はげしい雨のあとの
世界を気にかけてばかりいるそのうたを
それこそが音楽だなんてふうには思わなかったけれど
それもまた音楽なのだというふうに考えながら
まだ車のまばらな街角の空気は澄んでいて
ぼくは眠れなくてよかったと感じた
きれいな声のきちがいのうたがあり
雨はやんでいて
空は明るくなろうとしていて
それ以上のことがあるだろうか
それ以上のことが
なにか必要に感じるだろうか?
そんなことだけでいいのだ
幸運というものが
たとえばやすらかな眠りなんかと
ひきかえに
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