野良猫のうた/恋月 ぴの
バケツをひっくり返したようなって言われても
ピンとくるわけじない
ひところ軒先で騒がしかったツバメの巣はいつの間にやら静かになっていて
育ち盛りと餌を催促してた雛たちは
ハーメルンの笛の音に誘われたのか南の国へと旅立っていた
月島界隈で見かける取壊し間近な廃屋
昭和という時代は確実に死に絶えていくように思え
それだからこそ野良猫は野良猫らしく
時間貸し駐車場の片隅で
孤独を気取り
そっと差し出された手のひらに
懐かしいぬくもりを感じ取れたとしても
自分の欲するのはそんなんじゃないとクルマの下へと姿を隠した
アスファルトは緩やかに溶けて
かけがえの無い
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