野良猫のうた/恋月 ぴの
 
無い大切なものと引き換えに季節は移り変わり
雲ひとつ無い青空は野良猫には不釣合いだからと
自ら身を引くことの美しくも滑稽な顛末に
寅さんにでもなった気分で口笛鳴らす

路地裏には朝顔に取られてしまいそうな釣瓶を今でも見かけることはできるし
そんなひとときの僥倖をもんじゃのへらで捏ねくれば

おせっかいなおばさんに手際の悪さを咎められたとしても

今年も感傷と悔いに満ちた鐘楼流しに
もくもくと沸き上がる入道雲と
夕闇恋しい夜店の縁台で

あと少しなのにもげてしまった形抜きはほろ苦くも「にゃあ」と鳴く





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