書かれた?父/非在の虹
 
な怠惰と犬のような愛想と
気まぐれな不機嫌が家族をしばる
新聞を広げた父
聞くにたえない声で家族を呼ぶ父
母音の発音に開けた口には歯は一本も見えず
舌の上をさぐる蠅がいる
(父、父、父、と泣く声が聞こえるがあれはなにか)

深夜の寝言といびきと歯ぎしり 
それは 父の恐怖の叫びだ
(父、父、父、と泣く声が聞こえるがあれはなにか)

腐敗の時間の澱のなかで
廃墟にたたずむ父
しかし父そのものが廃墟なのだ
不安定な床板と
風雨で浸食された壁と
理解不能に歪んだパイプのぶら下がる部屋
(父、父、父、となく声が聞こえるがあれはなにか)

生殖と生殖のあいだに
立ち
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