書かれた?父/非在の虹
 
立ちすくむ無用者
存在の不合理
彼に幸福と不幸をあずけるのは
一生の大博打だ
父は泣く、父は泣く、息子のように
息子は泣く、父のように
ちち、ちち、ちち、となく

父の計画はあまりに浅はかだ
その結果息子に殺される
あるいは息子を殺し損ねる
これは古代の劇ではない
現在という時間のさなかで
父は死の時刻まで生きる決意が強いられた
しかし永い時ではないだろう
なぜなら父は湿地の瘴気におかされ危篤だ
(息子の声か、ならば過去からの声か)

父は湿地に埋葬されるだろう
一本の卒塔婆が、父の
勃起したペニスのように屹立するだろう
(父、父、父、と啼く声が聞こえるがあれはなにか)
(息子の声か、ならば過去からの声か)
(父の声か、冥界の声か)


2003年初稿 2007年弐稿 2010年参稿


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