7時15分の女/salco
では誰か若い男が下手くそな歌をがなっている
夢というのは主観の楽園だから、悲惨な幸福状態というのは同様に
傍観者の頭の中でしか成立しない
例えばそれはヤク中のトリップとか、雑音でしかないこの声と楽曲だ
などと考えながら私は見知らぬ肺ガン仲間に混じって煙草を1本吸う
ニコチン&タールの摂取も堂々の悲惨組で
空車タクシーがのろのろ回るロータリーの向うにあるビルの
34階には、自分を19歳だと信じ込んでいる女が棲んでいて
毎晩7時15分になると全裸で窓に立ち下界を眺める
髪が膝裏に届くほどだから30は超えているのではないかと思うけど
ここからだと顔なんか見えないから本当のとこ
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