7時15分の女/salco
ところはわからない
高い所にいるから体だって誰にも見えはしないんだけど。
それに今は時間が違う、あの窓はもう暗い
女は19歳の心のまんま大きな窓辺に立って見下ろしている
多分、歌でも口ずさんでいるのではないかと思う
するとその目は恐れと喪失に見開かれているのだろう
喧騒を外界に閉じ込める厚いガラスに体をくっつけて天使のように
薄い乳房と柔らかなお尻をしているのだろう
それで体の前面がすっかり冷え、瞬きを忘れた眼球がすっかり乾く頃
つまり7時20分になる前に、女は窓枠から床に下りて
部屋の中央に置かれた巨大な中華鍋へと戻るのだ
それが女の寝床だから
鍋には乾燥クコの実が8分目まで入れられていて、足を乗せると
南国の汀のような音を立てる
紅い貝殻の眠り。
あどけない女は中に潜り込むと、知った男の数だけオナニーする
立ち去った男達、ずるい男達
疲れ切った男達、いくじのない男達
水気に触れた赤い実がいっぱいくっついて愛らしい香りを立てる
毎晩、そうして淋しい悦びの内に眠る
何故なら言葉は何も印さない。
戻る 編 削 Point(9)