しみ/有末
に垣間見える安物の懐古主義とか、察してくれといわんばかりに強烈な臭いを放つ被害妄想、暗い過去、悲劇の物語、とか、その全てが堪らなく愛しい。私に会うときにはいつも買ったばかりの服を着てくるところも、可愛らしい。そして煩わしい。
彼女がひとりの典型であるように私もまたひとりの典型だ。彼女が愛しながらも疎む母親、彼女の軽蔑を買う父親、彼女が妬む美しい姉、そういった人々もまた典型である。母は当たり前のように病がちで、彼女の血流に緩やかな呪詛の言葉を流し込んだし、父親はそのおおらかな愚かさで彼女を苛立たせた。物事を単純明快に捉える美しい姉、誰からも愛されているように見える姉もまた、紙上の一筆画のごとき
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