失恋に溺れて/チアーヌ
演奏に関して、わたしは一切判断する必要がないのだと思うと妙にうれしい気がした。
ふと、そのあまり上手ではないギターの音が、ぐさりと体に刺さった、気がした。そして通り抜けて行くような、奇妙な幻想を持った。音楽がわたしの胸に穴をあけ、外の風を通し始めたような気がした。
空の色が、薄くなって行くのがわかった。
日が暮れてきているのだ。周囲の物が見えにくくなって行く。照明が少ないのか、カフェの中はどんどん暗くなって行った。
気がついたら、わたしはボロボロと涙を零していた。
我慢していたつもりは無かったのに、どこにこんなに涙が溜まっていたんだろうと不思議なくらい、涙は流れ続けた。
シ
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