失恋に溺れて/チアーヌ
 
 シャラシャラと流れるギターの音が、まるでシャワーのようにわたしの胸の中を洗ってくれた。そして太鼓の響きが、わたしの胸の中から凝固した悲しみのようなものを押し出してくれた。
 音楽のどこにも悲しみは無くて、むしろ乾いていた。それなのに。いや、だからいいのだろうか。
 わたしは椅子に寄りかかり、ビールを片手に、声も無く泣き続けた。つらい気持ちはなく、むしろ気持ちよかった。
 わたしはどこでもないところにいるような気がした。そしてそのどこでもないところに、わたしの中に溜まっていた水が、どんどん流れ出て行っているような気がした。
 胸につかえていたものが取れて行くのを感じた。自分でもなぜそれが今なのかわからなかったけれど、単にタイミングの問題かもしれない。
 ほんとうにびっくりするほど、わたしの目から涙が後から後から溢れてきて、わたしはそのままずっと、泣き続けていた。

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