失恋に溺れて/チアーヌ
 
ャンべに似た太鼓とアコースティックギター。楽器はただそれだけ。
 わたしはカウンターへ行って、ビールを一杯もらった。ライブは、1ドリンクで見られるようだった。
 風の入る窓際の席に腰掛けると、間もなく演奏が始まった。客はまばらだったけれど、仲間内だけという雰囲気でもなく、適度にばらけていて居心地が良かった。
 普段、わたしは仕事で音楽を聞きすぎるくらい聞いているけれど、こういう音楽をライブで、それもこんな風に聞くことは稀だった。
 ビールを飲むと、歩き疲れた体に、気持ちよく酔いが回って来た。
 風が顔を撫でる。
 そして音楽。
 そんなに上手な演奏ではなかった。
 けれど、この演奏
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