失恋に溺れて/チアーヌ
うだった。まるで音のシャワーを浴びたように感じた。見上げると、窓が開け放たれたカフェがあった。
はじめて見るカフェだった。
わたしは音に誘われるまま、細い階段をそのカフェへ向かって上がって行った。
扉を開けてカフェに入ると、そこはなんだか不思議な空間だった。
天井の梁は剥き出しで、裸電球が下がっているだけ。そうして古ぼけた木製の椅子やテーブルが、わりと無造作に置いてあった。窓が四方八方開け放たれているせいか風の通りが良く、そのせいか、エアコンは回していないらしいのに、それほど暑くなかった。
前の方を見ると、簡単なステージが用意してあって、そこで2人の奏者が準備をしていた。ジャン
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