それはガラスのような音がしているけれどもガラスではない/渡邉建志
ねんもたって、ふとあなたのにおいだけほんとうに感じたなら、わたしはたぶん、プルースト五冊分の感慨を書き連ねるぐらいの確信をもっている。あなたは愛されたみどり児であって、<あるだけで赦された>。わたしはであうべきではなかった、あなたとであうべきではなかった、あるだけで神から祝福されたあなたにあうべきではなかった。ときとところをまちがえたひととしてあなたは有った。すべてのこがれとあこがれをわたしからひきだしてそのまま消えたので、始点だけわたしにのこった矢印は、終点をどこにむければよいかわからない。とりあえず空に向けているんだとおもう。あなたが偶然ここをよむことがあるかもしれないね、そういう投げ瓶のよう
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