それはガラスのような音がしているけれどもガラスではない/渡邉建志
 
と、自分がまだ産まれていないみどり児になって、処女の胎内から聴いている鼓動のようだったと思った。





みどり児がわたし自身かどうか、わからない。それを見ているわたしがここにいるからだ。





おなかのなかで鼓動のような音を聴きながら、動けなくて、ご飯を食べないで布団にくるまりながら、本を読んでいたら、犬の声がした。白い犬が遠くの山奥で放し飼いにされていて、修道院を守っている。





護られている?





恐ろしく頭の良い嬰児が、無邪気に笑う。被写体は本当に無邪気なだけの赤ん坊だったとしても、そのうしろにある、全て知っていると
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