声/アンテ
がぎしぎし揺れる音だけ
お医者さんも看護婦さんも
なにも言わなかった
いちばん隅の個室のベッドに
横たわって眠っている彼女の
鼻から口を覆った透明なプラスチック
白いシーツがかかった胸が
わずかに上下して
そのたび呼吸器が音をたてる
閉じた目
束ねられた髪を
ぼくの手がなんどもくり返し撫でる
探り当てた手を握りしめる
あたたかい
今もずっと
あの遊園地で待っているんだ
ひとりぼっちで
ぼくを
ぼくが呼び覚ますのを
ぼくが眠るたび
何度もくり返し
彼女が呼びもどしてくれたように
たくさんの人たちが
丘にやってくる
どうやら少年を探しているこ
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