声/アンテ
 
女の容態を訊ねると
びっくりされた

壁のない
ひとつづきの区画を
壁に寄りかかりながら進む
ここはICUです
掲げられた文字

ある時
重い病気にかかった少年が丘にたどり着く
観覧車に乗り込むのが精一杯で
カゴのひとつに身を横たえたまま
窓のそとを見る力さえ残っていない
観覧車は少年のカゴをてっぺんまで持ち上げ
生まれてはじめて回転を止める
風がどこかからやってきて
カゴを揺らしてどこかへ過ぎ去る
少年はぼんやりと空を見あげている
ほら あんなに遠くに海が見えるよ
あの山のてっぺんには雪が
観覧車は必死に話しかけるけれど
少年に聞こえるのは
鉄骨がぎ
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