鈍き罌粟の季題/井上法子
 
へと流れ
舞ってしまえばいくつかの描写がひつようで
比喩はマテリアルの一部として傷もえぐらせる

そらに放てば息をわすれて
蝶のようにことばはいってしまうから
体温でそれをにぎりつぶせよ
銀粉まみれのてのひらに
酢のにおいをかぐような表情をして

浮遊するための羽音は
こんなにもすさまじいのか


}古井戸(秋)

てのひらはきらびやかです
おちたはずのそれを舐めると
おそろしくなまなましい味がしたんだ
おまえはわたしの中で消化され
またひとつの新しい韻律にころされるだろう

落胆にかたむきは震度を越えて
いつになく傲慢になれそうです
文句をわすれた
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