鈍き罌粟の季題/井上法子
 
れた「神様」を古井戸に投げ込んで
渇いた着音にむねをひびかせながら
わたしはピアノの鍵盤にふれる

殴り続ければいつかはころして
真っ赤にしぬはずだったのに
鍵盤を打つゆびさきが驟雨をおもわせて 

ゆっくり蘇生しなさい


}銀河(冬)

樹を植える姿勢で攻めていっても
じぶんのためには育ってくれず
だれかしらの雨や日光を遮るためのそれで
みずみずしいなんて形容詞は離れていって
古いコンタクトレンズにうつる魚影がちくちくして
カフェオレ臭い指をなめるとへんにいやらしくって

すべてをわるい方向へ流れさせて
わたしの想うあなたはうつくしい
それなのに
真夏の改札すら通らずにいってしまう

こっちに来なさい、
をわたしが言うわけにはいかず
わたしの手はあるひとの手首も掴めず
だから
自慰をするためのゆびさきで
わたしはいま

あなたを
ちょっとずつはじけ飛ばしている


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