音のない洞窟/吉岡ペペロ
ンゴは胸に冷っこい痛みを感じていた
そんな嫉妬という感情を振り回したくて
中学生かよ、オレ三十七なんですけど、
そうひとりごちてヤスダヨシミのことを思い出していた
それはきょうもう数千回めのような気がした
テレビでは深刻な土砂災害をやっていた
それが弛緩したあたまを引き締めてくれていた
日本は梅雨だった
あ、またいまヨシミのことを思った、
シンゴはじっさい孤独ではない
孤独という関係性の存在を信じていなかった
そとは雨が降っていた
シンゴは残骸をいれたコンビニの袋をごみ箱に捨てにでた
きゅるきゅると音たててRV車がはいってきた
駐車場内のみじかい横断歩道
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