ナンと何/番田
ものではないと言うのかもしれなかった。吉野屋には牛丼はなく、カレーしか販売されてはいないから。
私は何も考えることはないだろう。ここにあるナンにも私を考えることもないのである。そういうふうにして考えながら、人が言うには子供の頃を私は生きてきたそうだ。そういうふうにして、街を流れる川を私はそうすることもなく見てきたような気がする、昨日としてのカレーを食べた。しかし私としての辛めだったということは覚えていない。カレーをカレーたらしめているのはナンではない。カレーでも何でもないのはポケットの中のコインであり、それは無人島の中ではナンに見えるのであろう、何かであることは何かで、あることなのだと、無人
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