修善寺狂想/殿岡秀秋
露天風呂にはいっては
部屋にもどって父母がいるのを確かめてから
また別の風呂にいった
露天風呂の欄干にもたれて池をみる
楽しければ楽しいほど
ひとつの悲しみが
池に波紋をひろげる
ぼくはふざけて叔父と接吻したことがある
六歳のときだ
時がたつにつれてそのことが
唇に菌が糸をのばしていくようにしみこんでくる
気がして
気持ちわるくて
唇をとり変えたいと願う
普段は忘れているのに
楽しいときがあると
ぼくを罰しようとするのか
その想いが浮かぶ
今すぐにできない
時が経っても
取り替える唇が存在しないだろう
ぼくが大きくなるころには
整形手術が
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