都市風景(61〜80)/草野春心
 

  陰気なドブの臭いのほうへ
  純真はふらふら歩いてゆく……

  72.

  ながい休符のあとに何が待っているのか
  奏者らはいっせいに息をひそめ
  空席になった指揮台を見上げている

  73.

  憎しみはびたびたと音をたてて
  柔らかな臓物を鞭打つ

  74.

  ビルの屋上から正義の味方は身を投げ
  ショッカーか何かに生まれ変わろうと考えている

  75.

  ミスタードーナツのレジ台にしまいこまれた
  疲弊した貨幣

  76.

  子どもの目に映るのは不動の月
  彼らの世界に寄り添う月……
  
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