都市風景(61〜80)/草野春心
 
  大人たちは色々なものを動かしてしまう
  動かしてはいけないものまで

  77.

  ついえた一日が灰となり
  水たまりを汚してゆくとき
  無関係に
  無感動に
  我々自身の軟質な虚像が
  堪えきれなくなって欠伸をする

  78.

  我々にとって
  生きている時間よりも
  死んでいる時間の方が遥かに長い

  79.

  愛さえあればと言う女の濡れた唇
  アンパンを頬張りコーヒーを飲み込み
  暗がりの中で蠕動する彼女の肉体の
  いったいどの部分が愛を求めるのか

  80.

  赤子の微笑みさえもときとして欺いている
  欺きはいつも欺かれる者の側にある



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